より安全に富士登山を楽しむために

登山行動中のルールとマナー、事故防止のための予備知識

富士山の登山道は整備されていてほとんど危険は無く、たくさんある山小屋、救護所・避難所ほか安全面に大きな不安はないものの、僅かな件数ですが死亡事故がシーズン中に起こることも。最低限のルールとマナー、事故防止のための予備知識を正しく理解してご参加ください。

富士登山・行動中のルール・マナー

事故防止の為の最も重要なルールは「ガイド・山小屋ほか、現地の方々の指示を守る」こと。ガイドが同行しないフリー登山の場合、気象状況などは山小屋の方などに尋ねることで情報を得られます。

  • 山では登り優先、登山道以外を歩いてはいけません。
  • 斜面を横切る道(ジグザグに進む場所)では、出来るだけ山側を歩きます。(落石させない為・滑落しないため)
  • 騒音を出さないで。会話も周囲の迷惑にならないように。
  • 喫煙は風向きも考えて。携帯用灰皿必須・行動中は禁煙
  • 休憩は通行する人の邪魔にならない場所でとりましょう。

知っておきたい富士登山の危険・リスクと回避方法

富士登山では「道に迷って遭難」は先ずありません(吉田ルート、富士宮ルートの場合)。重大事故は高山であるが故の気象に起因する事故と、行動・自身に起因する事故に大別できます。

簡略に記しますが、詳しく知っておきたい方は遭難・事故のリスク情報や、富士山の気象なども参照ください。

気象に起因する危険・リスクと回避方法

深いガスに包まれたら不用意に動かないこと

落雷(極まれ・主に午後)
気づいたら雷雲の中だったりします。迫る積乱雲に気づく、雷鳴が聞こえる=即座に近くの山小屋へ避難
雷情報は吉田ルート:六合目・安全指導センタ―、富士宮ルート:五合目・総合指導センターで入手できます。
暴風・突風(まれ・日中・頂上周辺では多い)
天候に関らず、風速30m超の台風並みの強風が吹くことも。近くの山小屋へ避難、場合によっては登山を断念、お鉢めぐりは特に要注意です。
濃霧(まれ・日中)
足元がやっと見えるほどの深いガスに包まれることも。不用意に行動しないこと。

登山ガイド同行ツアーの場合、心配せずとも天候に起因する危険はガイドが回避の指示をしてくれます。フリー登山の場合は、怪しいと感じたら山小屋の方やガイドらしき方に聞く、ツアーに行動を合わせるなどの方法で回避できます。

行動・自身に起因する危険・リスクと回避方法

捻挫も程度によっては動けなくなることも…

滑落(極まれ・登山道から外れないこと)
強風に煽られる、岩場や残雪・凍結した場所で足を滑らせて、急斜面を滑るように落ちてしまう…骨折で済めばマシ。内臓損傷、最悪の事態も。
落石(時々・斜面を横切る場所では山側を歩く)
富士山は小規模なものも含めて落石が多い山です。蹴飛ばした小石、踏み外した道端がより大きな石を動かし、落石事故に繋がることも。遭遇したら「ラーク!」と叫ぶのが山のルール(聞こえたら声の方向に注意)。
急斜面を横切るようなつづら折れの道は常に山側を歩くことで自身が落石を起さないようにしてください。
捻挫・転倒(最多・大半は下山時)
浮石(ゴロっと転がっている石)を踏まないのはもちろんですが、疲れ果てて注意散漫なのか、下山時に転んだり「グキッ」てやる方多数。程度によっては歩行すら困難な場合もあります。最後まで緩めすぎないように。
低体温症(単独行で年数件・主に早朝)
頂上の気温は0度以下になることも。軽装や濡れた衣類だと体温を奪われ衰弱、最悪の事態も有り得ます。ご来光を待つ時間など長めの休憩時には特に注意が必要です。(夏山での死亡事故の大部分は、低体温症からの凍死です。)
熱中症(晴天時)
登山道に木陰はなく、平地に比べて日差しはとても強い。熱中症も重症となると死に至ることもあるのはご存知のとおり。衣類の調整、帽子着用、こまめに水分補給を

怪我や事故が多くなる、注意力が散漫になりがちな「荒天時」「下山時」。危険・リスクを知っていれば意識・注意も上がり、大部分は防ぐことができます。雪が残っていることもある7月初旬の山頂付近など、場合によっては手をついて歩く位の柔軟さも必要です。

高山病と予防対策

3,000mを越える高所のため酸素が薄く、登山中にひどい頭痛や寒気、気持ちが悪くなってしまうことがあります。「高山病」の症状です。

二日酔いに似た症状から「山酔い」とも言われる高山病を引き起こすのは睡眠不足や体調不良、オーバーペースなどが主原因。対処方を間違えると最悪な事態にもなり得る恐ろしい病です(どんなに注意しても体質的に高山病になりやすい人もいるそうですが…)。

高山病はけっこうツライ。軽い頭痛ならガマンもできますが…

高山病の予防対策として有効なのは

  • 可能な限り五合目での滞在時間を長く取る、軽く体を動かして「高所順応」してください。
  • 水分を多めにとる(水は重い!山小屋では高価!でも必須です)。
  • 身体を締め付けない服装で(体も膨張するそうです)。
  • 前日はしっかり睡眠・お酒は控えて。(登山中は禁酒!)

軽い症状なら頭痛薬・鎮痛剤で押さえ込むの一応アリですが、症状が進むのに気がつかなくなるのでお勧めできません。

高山病の特効薬は「速やかに下山」しかありません。症状が深くなる前に登頂を断念することを決断し、最寄の山小屋でゆっくり日の出前まで休んで、山小屋前の「ご来光」を楽しむのも一案。「頭が痛い…」「気分が悪い…」と感じたら早めにガイドに申し出てください。

富士山では、軽い症状も数えるとおよそ50%の人が高山病の症状が出ると言います(子供は7割近いとか)。また、発症には時間差があるとされていて、登頂・下山時に症状の出る方も(シャリバテ↓も似た症状なこともあるので…)。「携帯酸素ボンベ」をお持ちの方もよく見ます。効用は定かではありませんが「気休め」にはなります。

“シャリバテ”もとても危険です。

シャリバテ=飯(シャリ)が足りずにバテること(山用語)。医学的には血糖値が下がって力が入らなくなることを言い、一般的にはハンガーノック、ボンキングなどと言われます。

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激しい疲労感、脱力感、ふらつき、足がつる、のぼせ、立ちくらみ、頭痛などの具体的な症状以外に、意識は正常でも体がいうことをきかず、足があがらない、力が入らない、立っているのもやっとというような状態に陥ることも…

シャリバテは食事や行動食を摂ることで十分な糖質を補給し、しばらく休めば大抵回復できます。ただ、症状に気づく、対処が遅れるとより症状が深くなる、事故の危険性も高くなってしまいますので、早めにガイドへ申し出るようにしてください(フリー登山の場合は、先ずは休憩・カロリーを摂取して様子見を)。

エネルギーが足りなくならないよう、食事以外に補食や行動食、水分などを積極的に摂取するよう心掛けてください。

美しい富士山を守るために

富士は日本の象徴でもあり、世界中から登山者が訪れる美しい山です。この美しい富士山を守り後世に残すためにご協力ください。

日本人の誇り・世界遺産・フジヤマ。画像は最高峰「剣ヶ峰」

  • ゴミを持ち込まない・捨てない。気づいたゴミは拾ってください。
  • ティッシュペーパーは使わない。トイレットペーパーか水溶性のものをお持ちください。
  • 富士山は全体が国立公園。自然保護法という法律のもと、たとえ石一個でも持ち帰ることはできません。“記念に・・・”は写真に収めるだけにしましょう。

富士山登山ツアーの「登山レベル」

以下の一般的な登山レベルを基にすると、どのルートも「富士登山の登山レベル」は②(体力レベルは★★★、技術のレベルは★★)となりますが、コース毎に記載の登山レベルは、ガイドの有無・時間帯・休憩時間などの要素を加味してしています。

  • ①入門者向け:体力・技術の難易度が共に★
  • ②初級者向け:体力・技術の難易度の★合計が★★★★★以下
  • ③中級者向け:体力・技術の難易度の★合計が★★★★★★以下
  • ④上級者向け:体力・技術の難易度が共に★★★★以下
  • ⑤ベテラン向け:体力・技術の難易度のいずれかが★★★★★以上

体力:一日の歩行時間や標高差の目安

  • ★:歩行4時間未満・累積標高差500m未満
  • ★★:歩行6時間未満・累積標高差1000m未満
  • ★★★:歩行8時間未満・累積標高差1500m未満
  • ★★★★:歩行10時間未満・累積標高差2000m未満
  • ★★★★★:歩行10時間以上・累積標高差2000m以上

技術:歩行コースの状況・経験

  • ★:よく整備された遊歩道、散策路
  • ★★:整備された難所のない登山道
  • ★★★:注意を要するガレ場や岩場などがある
  • ★★★★:装備、経験が必要な岩場・雪渓などがある
  • ★★★★★:十分な経験を必要とする難所がある

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